好きこそモノの上手なれ

ほぼ百合成分100%(リリカルな感じ)で構成されております。但し過度の期待は禁物です。




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きっかけなんてこんなもの 前編 :: 2012/06/02(Sat)

長い文章でもドンと来いって言ってくださる方が
いたんですけど、よくよく考えたら長すぎると携帯で
読むとき疲れるんじゃないかなぁとか思って結局
二つに分けましたww。

って言うか、これ分割してあげている間に止まってる
長編書けばいいんじゃね?って言う悪魔の囁きが
聞こえたのです(ノω`)

んで私は見事にそれに引っかかる事にしました(をぃ)

今回はこんな二人はぜってぇいねぇよっ!っていう
へそ曲がりな発想から始まりまして(^ω^)

ガテンななのはさんとか、長距離運転手のフェイトそんとか。
んでもそれを考えた所で私が書けねぇじゃんって
思ったわけです(爆)。そこで考え方をちょいと変えまして
あんまり見ない職業は・・・と辿って行った所
ホスト話はよく見るけれどホステス話って少なくないか?と。

ホステスだとすると相手はやっぱリーマン?って事で
リーマンフェイトそんが誕生するわけです。
とは言ってもここはほら、私クオリティですから?
やりたい放題の好き放題な状態になるわけですww。
そんなこんななので今日と明日は俺得な文章になります

前置きが長くてごめんなさいねm(o´・ω・`o)mペコリン。

問題ないZって方はどうぞ続きから
今日は前編・・・・








■   □   ■   □   ■   □


「ハラオウン」
「なんでしょうか、専務」
「今日の接待にはお前も同席しろ」
「え?どうして私が?」
「お前を偉く気に入ったらしいぞ、向こうの専務が」

そう言って含み笑いをするのは、私の直属の上司であるナカジマ専務。口は悪いが部下想いのいい上司だ。世間でよく話題になる「頼りになる上司」とか言うアンケートがもし社内で実施されていたら、間違いなく上位に食い込む人だろう。ただ人当たりがいいだけではなく、人を見る目だったり、仕事に対する姿勢だったり。この会社の危機を何度となく救った人だとの噂も耳にした事もある人物だ。まぁ、それをこの人に聞いてみたところで「そんなものはただの噂に過ぎんさ」と笑って返されるのがオチだろうけど。

「お前、あの会社に一度行っただろう?」
「はぁ、社長のお供で仕方なく」
「仕方なくってお前なぁ。いずれこの会社を背負って立とうって人間がそんな事を言っててどうするんだ?」
「そんな事知りませんよ。大体それは勝手に決められた事で私が納得したわけじゃないんですから」
「全く、そんななりまでしておいて納得してないってなぁどの口が言うのかねぇ?」
「これは、別に将来の事とは関係ないですよ。単なる趣味ですから」
「趣味って、お前なぁ・・・。それ絶対に社の連中に言うなよ?」
「いいませんよ。私の楽しみを奪うつもりですか?」
「ばかやろう。そんなつもりはねぇよ。ったく、こんなヤツに引っかかる女がいるって事が信じられねぇ」
「あぁ、それは私も同感ですね」

私のそんな言葉に呆れた顔をするナカジマ専務。私の格好を上から下まで眺め見て「まぁその辺の下手な男よりはいい男に見えるがな」なんて顎に手を当てて感心している。そりゃあそうだろう。そう見えるようにお金をかけてるからね。スーツだってテレビでよく宣伝されているような「2着目からは半額」とか言う安物じゃなくて、ちゃんとオーダーメイドで仕立てたブランド品だ。ワイシャツやネクタイにしたって、一つ一つしっかり吟味して、嫌味にならない程度の高級感を出せる物を選んでいるし、素材1つとっても間違いのないものだばかりだ。

それに、自慢じゃないけど私は顔はいい。性格は、まぁこんな事をしている位だから多少は捻くれている部類に入るのだろうけど事女性に関して言えばとても爽やかな好青年に見えているはず。実際そう言われたし。長い手足に細身の身体、決して筋骨隆々とは言えないけれど、昨今の女性はそれ程身体に筋肉を求めていないような気がするから私くらいのが丁度いいんだ、きっと。だから女性には困らない。彼女らからしたら私は、仕事は出来て高給取り、見た目も性格も問題のない玉の輿男子だ。

ただ1つ問題があるとすれば、それは・・・・・。





「って事でいいな。ハラオウン」
「は?」
「何だ、お前。ちゃんと人の話を聞け」

あぁ、まずい。つい自分の思考に没頭しすぎてしまっていたようだ。専務がこの後の接待の予定を延々と話しているのに全部聞き流してしまった。怒らせちゃったかな。

「すみません。ちょっと考え事をしていました」
「ったく。深く詮索はしないが、程ほどにしておけよ」
「ご心配には及びませんよ」
「・・・ホントにこんなのに引っかかるヤツが気の毒でならん」
「失礼な、ちゃんと満足させていますよ。色んな意味でね」
「尚更だ」

これ以上は会社でする話ではなくなるので程ほどにして切り上げる。とりあえず私は今日の接待の時間と場所を聞いて、約束の時間までに何とか残りの仕事を切り上げられるように時間の調整にとりかかった。















「なのはちゃん。ええ?」
「もちろん。ナカジマ専務なら私も随分お世話になってるから」
「そうか?。ただ、今日は専務の部下が一人と取引先の専務が一緒らしいから」
「そっか。でも平気だよ。心配しないで。お仕事だからね、ちゃんとやるよ」
「そやけど・・・無理はせんといてな」

そう言って私の後ろから私と鏡越しに話をするのは、ここ「クラブ夜天」のオーナーの八神はやてちゃん。私の後見人でそして命の恩人。さっき話しに出てきたナカジマ専務を紹介してくれたのも彼女。そのお陰で私は幸運にもこの店の(はやてちゃんに言わせればこの界隈らしいけど)ナンバーワンホステスと言われている。ちょっとした事情があって私は限られた特定のお客さんしか相手にしないんだけど、それでもナンバーワンなんて呼ばれるのは、このお店「夜天」がちょっとした有名なお店だから。

店舗としてはそれ程大きくはないし、ホステスさん達もよく一流と言われるお店なんかよりも格段に少ない。だけど、不思議と心が落ち着くお店なんだ、ここは。大きな会社の取締役から小さな会社の社長さんまで。流石に金銭的な事もあるから学生さんとか社会人に成り立ての人なんかには敷居が高いお店なんだけど、その辺ははやてちゃんなりにこだわりがあるんだって。なんでも「偉い人間には目一杯お金落としてもらったらええんよ。そうせな下のモンに流れていかんやろ?金は天下の回りモノっちゅうてね」なんていいながらニカッと笑ってたっけ。

その言葉通り、実ははやてちゃん、ここの他にもお店を持っていて、そこは学生さんとか社会人1年生の人達にもとっても通い易いリーズナブルなバー。お値段はこれでもいいのかって言うくらいに押さえられているし、もちろん雰囲気だっていいの。だから常連さんも沢山。悩みを持ってやってきても、帰る頃にはみんな笑顔で家に戻れる、そんなお店。「あっちの赤字はこっちで補うから平気やよぉ」なんていっつも笑顔で私達に安心をくれる。

そんなはやてちゃんのお願いだもん。私、頑張るよ。無理はするなって言ってくれるはやてちゃん、本当は人一番心配性。私の事いつも「なのはちゃんは辛い事なんも言うてくれん」って言うけど、ここに来てからの私、辛い事なんてないんだよ?だけどなかなか信じてくれないの。それはきっと、ずっと私が無茶をしてきたのを知ってるからだよね。ごめんね、はやてちゃん。そしてありがと、はやてちゃん。


「なのは、はやてが呼んでる。行けるか?」
「ヴィータちゃん。うん、大丈夫」

少しの間考え事に集中し過ぎたみたい。ヴィータちゃんが近くに来るまで気がつかなかった。だめだなぁ。こんなんだから心配かけちゃうのに。ちょっとだけ苦笑しながら私は座っていた椅子から立ち上がった。

バックヤードからフロアでる直前、すぅっとバーテンダーのシグナムさんがやって来て「初めての客だ。ナカジマ専務が一緒だから大丈夫だと思うが」なんてこちらも心配顔。あー、もう。みんな私に過保護過ぎなの。

「平気だよ。私何年この仕事してると思ってるの?もう」
「そんな事はよく分かっている。だが無理をするお前が一番悪い」
「うっ・・・・ごめんなさい」
「まぁいい。頼んだぞ」
「はい・・・あっシグナムさん」
「なんだ」
「今日の私、どうですか?」
「ああ、いつも以上に綺麗だ」
「にゃはは、ありがとうございます。じゃあ、行って来ます」

シグナムさんの言葉に思わず息を飲む。そこを付かれるとちょっと痛い。真顔で話すシグナムさんに今日の私の仕上がり具合を尋ねてみたらニコリともしないんだけど、綺麗だって言ってくれた。彼女はこう言う事でお世辞は言わないから素直に嬉しい。あ、そうそう。バーテンダーの格好をしているんだけど、目の前のシグナムさん。女性なんだ。しかも美形。絶対お店に出ても問題ないと思うんだけど、こんなチャラチャラした服は恥かしくて着ていられないんだって。真っ赤な顔をしながらはやてちゃんに「それだけは出来ません」って頭を下げていた頃が懐かしいな。さて、私もお仕事しなくちゃね。気持ちを切り替えて私はフロアに一歩足を踏み出した。











「本当は、ここを接待の場所にはしたくなかったんだがな」

ポツリとそう言ったナカジマ専務の言葉の意味がなんとなくわかった気がした。ここは所謂高級クラブとは少し違うが、見渡す限りではこの店の客層はかなりいい。多分そこら辺の平社員辺りではとてもじゃないが手が出せるような店ではない。

だがそんな事が理由なのではなく、この店は、言ってみれば非常に落ち着くのだ。店の雰囲気もそうなのだろうが、ここで働いている女性達全てがみな洗練されていてそつがない。さり気なく一歩引いて、こちらを立てる。だが決して媚びている訳ではなく自分の意見もしっかりと持っている。話をしていても心地いいのだ。出来る事ならゆっくりとお酒を飲みながら会話を楽しみたいと思ってしまう、そんな場所だった。


「ならどうしてここを選んだんですか?」
「俺が決めたわけじゃない。あの専務が、どっから仕入れた情報かしらんが、俺がこの店の常連だって知ってたんだ」
「でもここ、会員制でも紹介制でもないですよね?」
「ああ、だが胡散臭い輩は入れないからな」

とニヤリと口端を歪めた。まぁ今日の連れは確かに胡散臭いな。特に見た目がね。とこんな事を話している間にどうやら目当ての女性が来たらしく、専務は私から視線を外した。

「お久し振りですね。ナカジマ専務」
「ああ、元気だったか?」
「はい、おかげさまで・・・あの」
「ん、おっとすまんな。こちらはウチの社の取引先の専務でな」
「初めまして、ダスターと申します。今日はナカジマ専務に無理を言って同行させて頂きました。あなたのお噂はかねがね」

にこやかに笑みを零しながら名刺を取り出したダスター専務。どうやらこの女性が目当てでウチの専務に接待の場を設けさせたんじゃないのかなと思わせるような身のこなしだった。見た目の悪さまではカバーできないけどね。と心の中でつい失笑する。

「悪い噂ではないといいんですけど」
「いやいやご謙遜を。噂どおり、とてもお綺麗でいらっしゃる」
「ありがとうございます」

見るからにスケベ心を丸出しにしたようなダスター専務の視線も物ともせず、目の前の女性は微笑を絶やさない。流石だなと思った。だが、確かに綺麗だと思った。長くサラサラとした栗色の髪は、腰の辺りまで真っ直ぐに伸び、太腿の辺りまでスリットの入った衣装からチラチラと見える足は白磁のような白さだった。適度に強調された胸元は、見えそうで見えない絶妙なラインを辿り思わずゴクリと喉が鳴ってしまいそうになる。こちらを見つめるその瞳は、澄んだ青空を思わせるような蒼だった。何にも、誰にも穢された事のないような彼女の肌理細やかなその肌に思わず舌を這わせてみたいとそう思ってしまった。

「どうぞ」
「あっ、ありがとう」

ぼんやりとそんな事を考えていたら目の前にお酒の入ったグラスを差し出された。

「なんだ、お前。随分とじっくりと見てるが・・・まさか惚れたか?」
「ちょっ、何バカな事を言ってるんですか?彼女に失礼でしょう?」
「あら、そんな事はないですよ。あなたのような素敵な男性に思われるなんて、とても光栄です」
「あなたまでからかわないで下さい」
「でもダスター専務さんも、とても渋くていらっしゃる。きっと沢山の女性におモテになるんでしょうね」
「いやいや、そんな事はありませんよ」

ナカジマ専務の言葉を受けて彼女が嬉しい事を言ってくれる。ついニヤけてしまいそうになるが、ここはあくまでも接待の席。私がいい思いをしてどうする。内心でそんな事を思っていたら、いいタイミングで彼女が彼のほうに話題を振ってくれた。流石だ。煽てられて上機嫌の専務はその後も面白いくらいに酒を飲み続けた。いい加減接待の枠を超えるんじゃないかと思った頃、今度は自分が支払いを持つからこの店で一番いい酒を出せと言い出した。

「専務、そろそろ時間も遅いですから、この位にした方がいいのではありませんか?」
「冗談でしょう?支払いなら私が持ちますから。折角の場を白けさせないで欲しいですね」

不機嫌な顔を隠そうともしないで話すダスター専務。そんな事を言ったって、いい加減酔っているだろうと口に出したくなる。この専務段々とやる事に遠慮がなくなって来ているのも心配だった。それに専務の隣で接客している彼女の様子も気になった。少し前から顔色が悪く、心なしか呼吸も荒い。チラリとナカジマ専務の方を見ると、専務もまた渋い顔をして、もうそろそろと口に出していた。

「なら君たちが先に帰ればいい。私はもう少し彼女と飲んでいきますよ」
「そういう訳にはいきません。それにいつまでも彼女を我々の所に留めておくことも出来ませんからね」
「彼女はそれが仕事なんだぞ?客に尽くしてなんぼだ」
「それは少し言葉が乱暴すぎますよ。第一彼女達に失礼だ」
「うるさい!!。おい、お前。早く酒を持って来い!」

酒のせいで気持ちが大きくなっている専務は段々と言葉遣いも荒くなっていた。そしてついには近くまで来ていたこの店の黒服に酒を持って来いと声を張り上げていた。やれやれ、接待の席でこれ程酔っ払うなんて、この専務も案外底が知れるな。そんな事を思っている時だった。



ガシャーン!!



ガラスの割れる音が店内に響き渡った。

「な、何をする!!」
「あ、す、すみま「どうかされましたか?」」
「何だ!貴様は」
「これは、申し遅れました。この店のオーナーをしております。八神はやてと申します」
「あ・・・・」

何があったのか、私が僅かに目を離した隙の事で分からなかった。騒然とする中、床に蹲るようにしていた彼女と、その彼女に今にも掴み掛かろうとしているダスター専務を必死に止めているナカジマ専務が目に入る。

まずいな、そう思って私も間に割って入ろうとした時、この騒ぎの中にあっても全く動じていない、とても穏やかな声が聞こえてきた。










第一印象を正直に言ってもいいと言われたら、私は間違いなく「スケベ親父」とそう言っていたと思う。それ程までにこの人の私を見る視線が気持ち悪かった。それでも、仕事だからと言う思いと、幸いにも私の隣に居てくれるナカジマ専務が幾らかの救いとなって私を落ち着かせていた。それに、ナカジマ専務に自分の直属の部下だと紹介された彼。この人の何て言うか、不思議な気配も私を助けてくれていた。男の人だったにもかかわらずに・・・。

全てオーダーメイドで用意されているのだろうスーツ、その彼の身を包んでいるワイシャツやネクタイ。時計などと言った小物に至るまで全てがブランド品だった。けれどそれが全く厭味なく思えるのは彼の容姿によるものが大きいのだろう。男性にしては珍しい長髪で金髪。それを首の後ろでキュッと1つに纏め上げ、シャープな顎のラインが男性とは思えない程の繊細な顔立ちを作って見せていた。目が悪いのか、薄いフレームの眼鏡の奥から覗く瞳はルビーのように赤く、きっとこの瞳で見つめられたら落ちない女性はいないのではないかと思えるほどだった。

(中性的って言うのかなぁ)

そんな安心感が逆に私自身の首を絞める事になるなんて正直この時はまだ分からなかった。


いつもならある程度時間が経過すれば私は別の席へと移動していた。だけど、今日に限ってなかなかそうして席を離れることができず、しかもお酒が進むにつれて、段々と遠慮なく触れてくるこの専務の手がとても厄介で。まだ服の上から触れられているだけだったら我慢できたんだけど。

この店の一番高いお酒を持って来いと言われた時、まずいと思った。だからお酒を取りに行く振りをして席を立てばよかったんだ、私が。そうすれば、こんな事にならなかったのに。


エリオにお酒を持って来いと怒鳴ったこの専務はその勢いに任せて私の肩を抱き、そして太腿に手を這わせた。この瞬間、ずっと我慢して意識しないようにしていた全部が一気に私に押し寄せてきてしまった。


男性特有の体臭、息遣い。手の感触。体の硬さ。その全てを一気に認識した私はテーブルにあったグラスを掴み中身をこの男に向けてぶちまけていた。怒った男が私を突き飛ばす。その弾みでグラスは私の手から離れ床に叩きつけられた。突き飛ばされた私はただ震える自分の身体を抱きしめながら蹲ることしか出来なかった。


騒ぎの中、はやてちゃんの声が聞こえて、それから誰かが私に触れた。一瞬身体を固くしたけど、それがシグナムさんだと分かって今度は一気に体の力が抜けた。歩けなくなった私を抱えるようにしながらシグナムさんがフロアから私を連れ出してくれた。




「大丈夫か?」
「はっ、はっ、はっ、はっ」

シグナムさんの声は聞こえるけれど、上手く言葉が出てこない。この感覚は久し振りだった。ずっと治まっていたのに。

「ぐっ」

荒い呼吸を繰り返すうち胃の辺りから込み上げてくるモノを感じて、慌てて私は支えてくれていたシグナムさんの手を振り払ってお手洗いへと駆け込む。

「なのは!しっかりしろ!」
「ぅぅ、ぐぇっ・・・うげぇっ・・はっはっはっ」
「ちっ。ちょっと待ってろ。シャマルを呼んでくる」

違う、これは。原因は分かっていた。対処方法もシャマルさんから聞いていたから、待ってとシグナムに言いたかったけれど、その声は届かなかった。

「はっはっはっはっ」

胃の中のモノを全て吐き出して、ここがトイレだと分かっていたけれどそのまま床に倒れこんだ。呼吸が苦しい。段々と指先かしびれて来ていた。動かない身体を何とか動かして、私は直ぐ目の前にあるものに手を伸ばしていた。

(届いて、お願い)

段々と意識が朦朧としていく中、グイっと私を抱き寄せた人がいた。

「あ・・・あ・・い、ぃやっ。やだっ、はな、しっ」
「落ち着くんだ!!」


私を抱き寄せたのがナカジマ専務の部下の彼だと気が付いた瞬間再び恐怖が私を支配した。

男、いや、助けて!。怖い、嫌だ!。

「はっはっはっはっ」

私は泣きながらその手を振り払おうとした。けれど力の入らない私の腕は、彼に縋るようにその腕に手を添えることしか出来ない。彼の腕はそんな私をまるで逃がさないとでも言っているかのように力強く、そして何故か温かかった。


「落ち着いて。これを」

そう言って差し出したのはトイレにゴミ捨て用として置かれていた紙袋だった。思わず彼を見つめる。その瞳はとても穏やかで優しかった。私を後ろから包み込む様に抱きしめて、それから袋を私の口元に当てる。


「慌てなくてもいい。ゆっくり。吸って・・・・吐いて・・・そう。いい子だ」

数回、それを繰り返す。徐々に指先にも感覚が戻ってくるのを感じる。ホッと安堵する一方で、どうして私はこの人に抱えられているのに平気なんだろうとぼんやりと考えていた。




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テーマ:魔法少女リリカルなのはStrikerS - ジャンル:アニメ・コミック

  1. リリカル パラレル
  2. | comment:1
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  1. 2012/06/02(Sat) 22:34:48 |
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