好きこそモノの上手なれ

ほぼ百合成分100%(リリカルな感じ)で構成されております。但し過度の期待は禁物です。




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私の願い、あなたの想い :: 2013/09/03(Tue)

この間の続き

フェイトさんsideからのぉ・・・






■  □  ■  □  ■


何も知らないという事で、こんなにも言葉は人を傷つける凶器になるのだと、この時私は初めて知った。






「キャラメルミルクはお口に合わなかったですか?」


一瞬何を言われているのか分からなかった。無意識に聞き返してすぐにその言葉の意味に気が付く。


忘れなきゃいけないと思っていた出来事。出来る事ならもう少しそっとしておいて欲しかった事実。けれど、現実はそう簡単ではなかった。







私には一つ違いの姉がいた。姉の名はアリシア。アリシアは生まれつき体が弱く風邪をひいただけでも入院しなければならない事もしばしばあった。そんなアリシアに母さんは付きっ切りで。私の身の回りの世話をしてくれたのはお手伝いのリニスだった。

父親は私が物心がついた頃にはすでにおらず、私達の生活のすべては母さん一人の収入で賄われていた。当然生活は楽なものではなかったけれど、それでも私は幸せだった。母さんとアリシアとリニスと。慎ましいながらもずっと一緒に暮らしていけるのだと信じて疑わなかった。



だけど・・・・。



私が高校に入学して間もなく。アリシアが血を吐いて倒れた。幸いこの時は母さんが近くにいたからすぐに救急車を呼んで最悪な事態にはならなかったけれど、その容態は決して楽観できるものではなく。この時は3か月ほど入院したのだった。退院してからもアリシアの体調が前の様に戻る事はなく、入院と退院とを繰り返す生活が続いていた。


本当は高校なんて通わずに私も母さんやアリシアの為に何かしたかったけれど、それはリニスに止められた。アリシアが行けない代わりにフェイトが外の世界をたくさん見て教えてあげて欲しい、と。そう言われてしまえばもう何も言えなかった。



高校2年になって、週に2回私はアリシアの付き添いで母さんの代わりに病院に行くようになっていた。行先は病院だったけどそれでも私は嬉しかった。アリシアの傍にいられる。母さんの助けになれる。ずっと願っていた事だったから本当に嬉しかったんだ。

でもそれは裏を返せばアリシアと一緒に過ごせる時間はもうそれ程残されていないという事で。私がそれを知ったのは随分と後になってからの事だった。



「ねぇ、フェイト」
「ん?」
「私の検査とか治療が終わるまで退屈でしょう?どこかで時間でも潰して来たら?」
「別に退屈じゃないよ。本をゆっくり読む事も出来るし、その気になればここで課題だって出来ちゃうよ」
「そう?・・・・ならいいんだけど」


そう言ってみたものの、アリシアの性格を考えるといらぬ気を回させているのかもしれないと思い直した私は、アリシアが診察されている間は別の場所で時間を潰そうと考えたんだ。


そうして通うようになったのがこの喫茶店だった。近所でも評判のお店だったし、なにより病院からも近かったからアリシアと一緒に病院に来た時には必ずここに立ち寄る様になっていた。何度か通っている内に、このお店の人気のメニューがオリジナルブレンドコーヒーとキャラメルミルクだと知った。私はあまり甘いものが得意ではなかったから、来た時はいつもコーヒーだったんだけど、ふとこのキャラメルミルクをアリシアにも飲ませてあげたいなって、思うようになったんだ。


それ程厳しい食事制限はされていなかったけれど一応担当の先生にも確認して。問題ないよと言ってくれた次の診察の日から私はキャラメルミルクをテイクアウトするようになった。


「どう?」
「うん・・美味しい」
「良かった。子供味覚のアリシアだったら絶対に好きだと思ったんだ」
「ちょっと、それは酷いんじゃない」
「だって本当の事だよ?」
「うっ・・まぁ、否定はしないけど・・・フェイトのは?」
「私はコーヒー飲んできたから・・・もちろんブラックで」
「・・・ちょっと前まで砂糖とミルクタップリだったくせに」
「ふふん、そんなのはとっくに卒業したよ」
「カレーは甘口の癖に」
「なっ!そ、それとこれとは別だもの」
「ふっ」
「あ!鼻で笑った。今アリシア鼻で笑ったーーー!」



今思うと本当にくだらない言い合いだった。だけどそんな小さな事でも私達には大切な時間である事に代わりはなかった。




その頃からお店の女の子とも言葉交わす様になって、その事をアリシアに話したら珍しいね、他の子に興味を持つのって、なんてからかわれたりもしたっけ。だけどそんな楽しかった日々もあっけなく終わりを迎えた。再びアリシアが吐血して入院したのだった。





「・・・・・もう一度言って?母さん」
「次に発作が起きたら多分もうアリシアはもたないわ」
「うそ・・・だってそんな素振り。ちっとも」
「頑張ったのよ、あの子も。本当はもっと早くに入院するように言われてたのに。あなたと一緒に過ごす事の方を選んだの」
「どうして・・・そんな」
「入院したらもう退院出来ないって知ってたからよ」


淡々と話す母さんの言葉が酷く遠くの方で聞こえるようだった。いっそ怒鳴られた方がどんなに楽だったかしれない。お前のせいだと、本当はもっと早く入院させたかったのだと。


「私の事なんて、気にしなくて良かったのに・・・。自分の事だ、け・・・考えてくれれば、良かったのに・・・・アリシア」


何も知らずに、ただアリシアと一緒にいられる事だけに浮かれていた。きっと苦しかっただろうに。痛くて泣きたい時だってあっただろうに。どんなに悔いても過ぎてしまった日々は戻らない。だけど・・・


「アリシアはまだここにいる」


発作さえ起きなければきっと大丈夫だ。退院できなくたって構わない。アリシアが生きてここにいてくれるだけで、それだけでいいんだから。この日から私は時間が許す限りアリシアの傍にいる事を選んだ。毎日学校の帰りに病院に寄った。アリシアも私の帰りを待っていてくれた。そうやって静かに、何事もなく日々が過ぎているように感じていた。だけど・・・終わりはもうすぐそこまで来ていたんだ。



「ねぇ、フェイト」
「ん?」


眠っているのかと思っていたアリシアに声を掛けられた。


「またあのキャラメルミルクが飲みたいな」
「行こうよ、今度は一緒に」
「行けるかな?」
「行けるよ」
「うん・・・フェイトも飲んでみるといいよ。甘さ控えめだからきっと大丈夫」
「ん・・・そうだね」


窓から差し込む夕焼けがとても綺麗な日だった。私がアリシアと言葉を交わせたのはこの時が最後。容態の急変したアリシアがあっけなく息を引き取ったのはこの日の深夜だった。

それから1日と開けず。いつの間にか姿の見えなくなっていた母さんが車にはねられて帰らぬ人となった。看病による疲れのせいで注意力が散漫になっていたせいか、或いは自分から車に飛び込んだのかは分からない。だけど、この日。私は最愛の家族を一度に失ってしまった。



そこからの数日の事は殆ど覚えていない。母さんの友人だという人が親身になってくれて、リニスと一緒に葬儀やら何やらの手配を全てしてくれた。殆ど学校にも行けてなかったのに多くの友人がアリシアを見送ってくれたのがとても嬉しかった。色んな事が一度に起きて、一度に終ると残ったのは一人になってしまった寂しさだけで。ただアリシアとした最後の会話だけがずっと頭の中をループしていた。






気が付くと私はあの喫茶店にいてキャラメルミルクを注文していた。アリシアが美味しそうに飲んでいたその姿が浮かんでついと涙がこぼれる。いつもの女の子が驚いていて、私は慌ててそれを拭ったらどうやら目尻が赤くなってしまったらしい。心配してくれるその様子を見ながら、だけどこれ以上私に入り込んで欲しくなくて大丈夫だからと口早にそう告げた。


キャラメルミルクはアリシアが言った通り美味しかった。甘さも控えめで後味もすっきりしていた。もっと早く2人で一緒にこれを飲んでいたら、どれだけ話も弾んだだろうか。そう考えると胸が痛くて、苦しくて。だから、私は決めた。もうキャラメルミルクは飲まない。アリシアとした約束を果たせなかった私のせめてもの償いのつもりだった。
















目の前であの子が泣いている。確かなのは、とか言ったかな。直接本人に聞いた訳ではないけれど、このお店のマスターがそう呼んでいたのを覚えている。泣かないでと声を掛ければ良かったのだろうか。気にしないでと笑顔の一つでも見せれば良かったのだろうか。


だけどこの時の私は彼女に何一つ優しい言葉をかけてあげる事は出来なかった。子供だったんだ。自分の気持ちを抑え込むのに必死で目の前の女の子の気持ちなんて考える余裕はなかった。


この日以来、私はあのお店に行く事はなくなった・・・・・。




















雨が上がったぞ。そんな声になのはは我に返る。窓辺から空を見上げて一度大きく伸びをした。


「じゃあ、先に帰ってるから」
「ああ」


そう声を掛けて歩き出す。入り口を出ようとして誰かかそこに立っているのがシルエットで見えた。なのははドアにかけようとした手を引いて、外にいる誰かが中に入ってくるのを待った。それは店に来たお客さんだろうと思ったからだ。

カラン、と小気味よい音を立ててドアが開く。中に入って来たのはOLだろうか。スラリとした立ち姿に思わず見惚れる。


(綺麗な人・・・・え?)


何気なくその人の顔を見ていたら思わず目があった。そして蘇る記憶・・・・・。



「こんにちは」
「・・・・」
「えっと・・私の事、覚えてるかな?」


照れくさそうに笑うその顔になのはは確かに見覚えがあった。5年間、ただ待ち続けた人。もう会えないだろうと諦めようとした。けれど、たった一つの想いがなのはに彼女を忘れる事を許さなかった。


「・・・・ほん、とに?」
「ん?・・・あ、えっと、5年前位にね、ここによく来てた、んだけど」
「・・・会えた・・・やっと、あなたに・・・」
「え?、ちょっ!ど、どうしたの?あ、もしかして私が入って来た時どっかぶつけた?」


ボロボロと涙を流し始めたなのはに目の前の女性は・・・フェイトは慌てた。もしかして自分が入って来た時にドアにでもぶつけてしまったのだろうかと彼女の肩を掴む。その手をなのはが掴みそのままその場に崩折れてしまった。その勢いに引きずられるようにしてフェイトも床に膝をつく。



「ごめ・・・ごめ、んなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


ごめんなさい。そう繰り返すなのはにフェイトはとても辛そうに顔を顰めた。


「ずっと・・・謝りた、かった・・です。あの、日・・・私はあなたを・・・傷・・つけた・・・あなたの・・・気持ち、かんがえ・・・なかっ・・ごめん、なさ」


フェイトに会えた事で、ずっと胸にしまいこんでいたものが一気に溢れ出していた。フェイトを傷つけ、つらい事を思い出させた。自分のつまらない感情のせいで、どれ程悲しい想いをさせてさせてしまったのだろうと後悔しない日はなかった。謝ったからといって心に残る傷が癒えるはずはないと分かっていた。けれど、もしも願いが叶う事があったなら会ってちゃんと謝りたいとこの5年を過ごして来た。

そんななのはの想いを受け止めて、フェイトはその震える肩をそっと抱いた。ピクリと身体を強張らせたなのはに、もういいんだと優しく告げ、本当に謝らなきゃいけないのは自分の方だと頭を下げた。


「キミに辛い思いをさせてるんじゃないかって本当はずっと前から思ってたんだ。だけど、臆病な私は、それを確かめるのが怖かった。だから私はキミの前から逃げた」
「え?」
「あんな話、本当はしなくても良かったのに。キャラメルミルクを飲まない理由なんてなんとでも言い訳はできた。でもそうしなかったのはきっと誰かにこの辛さを打ち明けたかったんだけなんだ。一人で抱えるのが苦しくて、他の誰かに縋りたかっただけなんだ。それを私は幼いキミにぶつけた・・・・最低だよ・・・・。なのに、ふいに思い出すのはキミの笑顔だった」
「え?」
「キミの笑顔は周りの人を幸せにしてくれる。ずっとそう思ってたよ。ここに通っていたあの頃からずっとね」


だから、笑ってくれないかな。フェイトはそう泣き笑いの顔でなのはに告げた。









ずっと謝りたかった5年を過ごしたなのは。


ずっとその笑顔に励まされていた5年だったと伝えたかったフェイト。





平行線をたどっていた二人の道が、今やっと繋がったのだった。













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